バンドで歌う時、けっこう難しいのがボーカルキーの決め方です。
この記事ではジャズに特化してボーカルキーの決め方を説明したいと思います。
・現在素人でジャズボーカルを歌っている方
(プロの方向けの記事ではありません)
もちろん、他のジャンルの音楽にも共通するところはありますので、他のジャンルを歌っている方にも参考になるはずです。
さっそくこの記事の結論です。
ジャズの場合、この5つのキーに決めると演奏者が演奏しやすくなるので皆(バンドメンバーも)から喜ばれます。演奏のクオリティが下がることがないので結果的にボーカルも歌いやすくなります。
E♭(Cm)
F(Dm)
G(Em)
B♭(Gm)
※( )内は並行調
この記事では、上のキーを「おすすめする5つのキー」と呼ぶことにします。
目次
ボーカルキーの決め方は、高い音から決める

ボイストレーニングなど本格的にボーカルをやっている人は把握しているでしょう。
やっぱりボーカルをやるのなら自分の出せる一番高い声は、どこまで出るか把握しておいくべきです。
でも、ピアノなどで自分の音を確認しなくても簡単に把握できる方法がるので紹介しておきます。
まず、あなたのレパートリーで一番歌いやすくて、一番高い声を出している歌があると思います。その歌の一番高い音が、あなたの出せる一番高い音です。
譜面があれば、譜面を見て確認してもOKですし、譜面がなければ、その音が鳴っているところで曲を止めてピアノで確認すればOKです。
近くにピアノやキーボードがない場合は、スマホからキーボードのアプリをダウンロードして確認してみてください。簡単でしょ。
ちなみに以前ネットに「キーを決める時、自分の低い音から決める」という記事を見たことがありました。
「高い声は裏声(ファルセット)でも調整できるが、低い声は調整できないから。」という理由です。
私は、この意見には賛成できません。
なぜなら、ほとんどの人は、中音域から高音域の声の方が綺麗に響くので、高い方の声を合わせましょう。
それでも、「私は、低い声の方が出しやすい」という方がいたら低い方から合わせてもダメではないと思います。
基本は、高い声に合わせると覚えておいてください。

素人のボーカリストがキーを決める際の失敗例
バンド演奏で歌う時って、自分で気づかずに意外とパワーを使って腹の底から声を出しているので、普段だったら出せない高い声を出しています。
冷静にピアノなどで自分の一番高い声を確認し、キーを合わせて歌うと「え、意外に低い。もっと出せたのに!」という時がよくあります。
私も何度かありましたよ。
自分の一番高い声を把握することは必要ですが、曲によっても若干違ってくるので、最終的には自分で歌ってみて微調整することになります。
もう少し細かく説明すると、曲の中で一番高い音が、地声で出す声なのか裏声(ファルセット)で出す声なのかで違ってきます。
その曲の一番高い音が一瞬の場合は、自分の一番高い音よりもっと高くても全然大丈夫です。
(一瞬だけ出す声はかすれ気味でも味のある声になるのでOK)
なので、キーを決めたら必ずバンド演奏で歌ってみて微調整してくださいね。

ボーカルキーを決める時の注意点
ジャズの世界ではまず聞いたことはありませんが、ネットで調べているとロック系のバンドでは、「なるべく原曲キーで歌ってほしい」と演奏する側から要望を出す人もいるらしいです。
もちろん、上手い人ならキーが変っても演奏には全く支障ないので、そんなことを言う人はいないと断言できます。特にギターは、移調しやすい楽器ですからね。
しかも、「声を出すのはボーカルの仕事だから原曲で歌えるよう努力してほしい」とか。
「いや~、これは厳しいな~」と思います。「私はちょっと無理かな~。」
音楽をやるということは、お互いのことを尊重することなので、お互い歩み寄りは必要ですが、完全にそれを求められても困ります。
少し頑張って原曲キーで歌えたらいいですが、そうでない場合は、ボーカルからキーを変えてほしいということを主張しましょう。
素人の方がボーカルを始めると、音楽的には圧倒的に演奏する人の方が知識がありますが、「これをやりたい」という願望は、知識のあるなしには関係ないはずです。
譲れないところは譲らなくていいですよ。

ボーカルキーの決め方【ジャズ編】おすすめする5つのキー
以前、ジャズのセッションに参加していた時、隣で話していた会話です。
素人ボーカリスト:「この曲のキー、本当はもう少し上げたいんですが、D♭にするとピアノの人とか演奏する人は、やりづらいんでしょ。」
プロピアニスト:「大丈夫ですよ。弾けないのは演奏する方が悪いんですから。どんどん歌いやすいように歌ってください。」
この会話に悪い人は誰もいません。プロの方はやっぱりこう答えます。
プロであれば、どんなキーが来ても弾けるように準備していますし、「移調は自分にとって簡単なこと」と主張したい気持ちにもなると思います。
それでも、初心者の演奏(特にピアにスト)は、普段演奏しないキーに移調されると結構厳しいです。
よくセッションに行って、ボーカルが歌う時になると今まで弾いていた人が、「あ、歌伴は止めておきます。」と演奏を止めることがあります。
私が、せっかく用意した弾きやすい譜面であってもです。黒本と同じキーであっても条件反射的にステージから降りてくることがあります。
そこで「おすすめする5つのキー」で譜面を作ると、演奏する方は喜んで演奏してくれます。演奏のクオリティが上がるので結果的にボーカルも歌いやすくなります。


E♭(Cm)
F(Dm)
G(Em)
B♭(Gm)
※( )内は並行調
ちなみにジャズスタンダードバイブル1(黒本1)には、227曲掲載されていますが、その中で「おすすめする5つのキー」の曲は、201曲あります。

ということは、黒本1で「おすすめする5つのキー」の占める割合は、88,5%なんです。
このようにジャズの演奏者は、圧倒的にこの5つのキーで演奏することに慣れています。
「おすすめする5つのキー」を弾けるようになると黒本1のほとんどの曲を弾けるってことですから。これってすごく大事ですよね。
慣れたキーで演奏をしてもらう為に、素人ボーカリストは、「おすすめする5つのキー」に合わせてキーを決めることを強くおすすめします。
あなたのキーにバッチリ合わせなくても、ちょっと頑張って上げるか下げるで「おすすめする5つのキー」に合わることが大事なんです。
自分のやりたいキーに合わせてほしいと主張するのですが、演奏者が演奏しやすいキーに合わせるということです。
管楽器の場合、それぞれの楽器ごとに違ったキーで作られています。
トランぺットならB♭で作られているので、トランペットでド・レ・ミと吹くとピアノで言うとシ♭・ド・レと音が鳴ります。
なので、トランペットとしては、B♭の曲が吹きやすいということになります。
ちなみにテナーサックスも同じB♭、アルトサックスとソプラノサックスだとE♭、フルートはCになります。
管楽器との兼ね合いでこの5つのキーの曲が多いとか。

ボーカルキーの決め方【ジャズ編】 まとめ
バンドは、お互いのことを思いやっていい音を作ることなので、自分のキーを決める時に演奏者のことを考えて弾きやすいキーに設定するということがものすごく大事になってきます。
「いや、どうしても5つのキー以外のキーで歌いたい」という人もいると思います。
大丈夫です。あなたがもっと上手くなってプロの方と一緒にできるくらいになると、この「おすすめの5つのキー」に設定しなくても問題ありません。
その時は、あなたの好きなキーを指定してください。
その時までは「おすすめの5つのキー」で歌うことをおすすめします。


E♭(Cm)
F(Dm)
G(Em)
B♭(Gm)
※( )内は並行調