街のライブハウスでやっているジャズのセッションは、インスト(インストゥルメンタル=ヴォーカルのない曲)の曲が多いですが、ジャズには素晴らしい女性ヴォーカリストがたくさんいます。
この記事では、ジャズ初心者の方にこの人だけは知ってほしいという女性ジャズヴォーカリストをスタンダード曲と合わせて紹介します。
これを読んで音源を聴いたらひと通り女性ヴォーカリストのイメージが付きますが、この記事を読んでもっと女性ジャズヴォーカルのことを知りたいと思ってくれたら嬉しく思います。

目次
サラ・ヴォ―ン ジャズ史に残る最高の女性 ジャズシンガー
御三家3人の中でもサラ・ヴォーンとエラ・フィッツジェラルドが並び称されることが多く、どちらかの名前を一番にもってくる場合が多いですが、私ならサラ・ヴォーンを最初の女性ジャズヴォーカリストとして名前を上げます。
どちらかと言うと私はエラ・フィッツジェラルドの歌をよく聴く方ですが、サラ・ヴォーンには他の人が真似できないオリジナリティーを感じます。
流れるようなメロディがとても美しく我々が勝手にお手本にするにはいいのですが、ほとんど真似ができたような気がしないほどセンスを感じる歌い方です。
サラ・ヴォーンの出生を調べてみると、1924年にニュージャージー州に生まれ1940年代(10代で)にすでにデビューをしています。
モダンジャズのビバップのスタイルを活かしたモダンジャズシンガーとして若い時から人気があり、スタンダード曲も多く残してくれています。
ラヴァ―ズコンチェルト サラ・ヴォーン
ジャズ以外にポップスにも挑戦しておりジャズファンには少しだけ残念かもしれませんが、彼女の有名な曲を上げると必ず「ラヴァ―ズコンチェルト」があげられます。
「ラヴァーズコンチェルト」の原曲はバッハの「メヌエット」です
ララバイ・オブ・バードランド(Lullaby of Birdland) サラ・ボーン
そして何と言っても「Lullaby of Birdland」が一番有名です。
街に出てライブを聴きに行くと女性ヴォーカリストでこの曲を歌っている人は本当に多くいます。特に女性の方はレパートリーに加えておくといいと思います。
子供の頃、「トムとジェリー」というアニメがあり夕方よくテレビを見ていましたが、そこに女性シンガーが登場するシーンがあったように思います。 その時のモデルは、サラ・ヴォーンではないかなと遠い記憶の中に残っています。
エラ・フィッツジェラルド パーフェクトなジャズヴォーカリスト
2人目は、私の大好きな女性ヴォーカリスト、エラ・フィッツジェラルドです。
ヴァージニア州に1917年生まれなので、サラ・ヴォーンと同年代です。
当時のアメリカは移民や人種差別もあり混沌とした時代背景がありますが、エラ・フィッツジェラルドは14歳で孤児になり不遇な思春期を送っています。
歌の上手さは抜群で、若くして周りに評価され人気も出ました。
ありがたいことにエラ・フィッツジェラルドの歌は非常に正統派で、しかもたくさんスタンダード曲を歌っておりyoutubeにも残してくれているので素人が歌を勉強するには非常に助かります。
レジェンド級の歌手がスタンダードを歌うとオリジナリティーを前面に出してテーマも聴きづらく、またニューヨークなまりが強いと発音も真似しづらいことが多いですが、彼女の場合は、それがないので参考にするにはとてもいいです。
バラードも素敵なのですが、エラ・フィッツジェラルドの歌はリズム感がすごいです。特に「HOW HIGH THE MOON」は素晴らしいので是非聴いてみてください。
ハウ・ハイ・ザ・ムーン(HOW HIGH THE MOON) エラ・フィッツジェラルド
2分過ぎからテンポが速くなって後は止まることない高速スキャットに入ります。
マック・ザ・ナイフ(Mack The Knife) エラ・フィッツジェラルド
「Mack The Knife」もとてもスタンダードナンバーです。 でもこの曲、セッションでは聴いたことありません。 モダンジャズ好きの人には、人気ないかもしれません。
それに「マック・ザ・ナイフ」は、途中で必ず半音ずつ上がっていくのでそれをセッションで真似するのは合わせづらいですね。
素人の私が、ひとつだけ意見を言わさせてもらうとエラ・フィッツ・ジェラルドの良さは「明るさ」です。
他のモダンジャズのヴォーカリストは、「すごみ」「重厚さ」を重視していることが多いですが、彼女の場合、 「明るさ」がオリジナリティーになると思います。


ビリー・ホリデイ 玄人好みの表現力
ビリー・ホリデイは、1915年生まれのジャズヴォーカリストです。(エラより二つ年上)
彼女は、サラ・ヴォーンとエラ・フィッツジェラルドと共に女性ジャズヴォーカリストの御三家と称されていますが、スタイルが2人とは全く違うので私のイメージとしては、ビリー・ホリディは別格です。
とにかく人生が壮絶です。
幼少期から不遇な人生を歩み、大人になってからも人種差別、薬物依存、アルコール依存症、逮捕、レズビアンなど波乱万丈という言葉でも語りつくすことが出来ません。
生前はサラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルドほど人気はなかったようですが、ジャズ史に残した存在感は絶大なものがあります。
素人からしたらビリー・ホリデイの歌を真似ることは不可能です。彼女の人生があるからあのような説得力のある歌が歌えるのであって、この飽食の日本で彼女のような歌を歌う人はいないと思います。
ひとつお手本にするには、「人の真似はしなくていいこと」ではないでしょうか。
ビリー・ホリデイほど壮絶な人生を歩んでいなくても今持っている感情をそのまま歌に乗せるということを実感するには、彼女の歌は非常に参考になります。
歌の練習よりも朗読の練習をした方が、聴いている人には何か伝わりそうな、そんな感じのする歌です。
奇妙な果実(Strange fruit) ビリー・ホリデイ
ビリー・ホリデイと言えば、「奇妙な果実」というくらい有名な曲です。
やっぱりもう一度聴いても初心者の方にはおすすめしません。 夜一人お酒を飲みながら聴いたら絶対にどこかおかしくなりますよ。聴く時は気を付けてください。(笑)
ヘレン・メリル 誰でも聴いたことある女性ジャズヴォーカリスト
ヘレン・メリルは、1940年ニューヨーク生まれのジャズヴォーカリストです。
はっきり言って、今まで紹介した3名とは、格が違うかもしれませんが、あまりのもヘレン・メリルの歌った曲が日本では有名なスタンダード曲なので名前を上げました。
You’d be so nice to come home to ヘレン・メリル
この曲は、てっきり彼女の曲かと思ったら、作曲はコール・ポー―ターが作り映画 “Something to shout about” の挿入歌として別の人が歌っていたらしい。
この曲は、他の人にもよく歌われているが、日本ではCMで彼女の曲を使い有名になりました。
で、ヘレン・メリルの歌もオリジナリティーがあり、なかなか真似できる歌ではありません。
ただ、この曲は女性ジャズヴォーカリストの教科書のように皆が歌っているので、横に習えでどんどん歌っていい曲です。
誰が歌ってもヘレン・メリルの歌にはならないので、素人が歌ってもOKというわけです
ジャズヴォーカリストは、男性よりも女性の方がたくさんな人がいます。おそらく女性の方がジャズの雰囲気にはまりやすいのだと思います。
少しずつジャズヴォーカルに興味をもってくれると嬉しいです。

